タツルカ(たつるか)

多くの音楽の種類には、リズムに独特の「訛り(なまり)」がある。「訛り」は「グルーヴ-groove」とほぼ同義だが、グルーヴがフレーズや曲全体に対しての「ノリ」としても使われるのに対し、「訛り」はリズムの小さい単位のゆらぎを指摘して言うというニュアンスの違いがある。

サンバの「訛り」で特徴的なのが、楽譜としては{(16分音符×4)×4拍}で表される1拍1拍の中に現れる16分音符の不均等な揺れで、16分音符の(4)つ目にアクセントがあって長めであるもの。(2)と(3)とは短くかつまとまっている印象であり、下記画像の上段の実際をあえて大げさに表現すると下段のように聞こえることとなる。上段を下段に書き換える際にリズムを変えるのみならずさり気なく「音程」を加えているが、それは16分音符それぞれの熱量を示すと共に「たつるか」のイントネーションも同時に表している。
たつるか
16分音符の「(1)(2)(3)(4)」は、
返し打ちのタンボリンで言えば「ヒット-ヒット-リバース-ヒット(H-H-r-H)」であり(2)から(3)にかけての返し打ちが少し走る感じ、
パンデイロで言えば「親指-ヒール-トウ-ヒール」で最後のヒールがアクセントになる感じ、
ショカーリョで言えば「順-逆-順-逆(F-R-F-R)」のやはり最後のリバースがアクセントになる感じ、
として演奏することになる。

言うまでもないが、パゴージなどの実際の演奏ではこの固定した「訛り」だけを続けるわけではなく、例えば4拍目や1拍目の(2)にアクセントが来たり装飾音が入ったりするし、楽器ごとの訛りのズレを楽しんだりもするものである。「たつるか」は、パルチードアウトと共にサンバのリズムの特徴を表す代表的な語である。

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