1999/7月  第4回   

投稿:AグリアK氏「真夏の夜のこと」
キソチシキ★リオのパレードの構成と採点について」

さて、ご好評いただいております投稿コーナー。今回は「名前は出せないっ」とおっしゃる、とても謙虚なK宮さん@アレグリアです。《K宮氏=埼玉のチーム「アレグリア」の重鎮にして,とりあえずリベジのメンバーでもある。サンバに対するハムハム度ではだれにもひけをとらない。先頃結婚して『家庭はダイジョブかk沢』の一部を襲名した。解説:byおおゆみこ》K宮さんいわく「ただずらずらと昔の事を書いただけですので、好きっていう気持ち全然表現出来なかったように思います」ですって。そんなこと全然ないよぉ、Kみちゃん。 *************************

『真夏の夜の事         K氏』
 どうも噂のK氏でござんす。稲葉さんが師匠と仰ぐなんて書かれた日にゃー、恐れ多くて名前は出せないでござんす。しかも金沢のアニさんのあの素晴らしい文の後ときちゃーやりにくい訳でござんす。でも「好き勝手に書いて」とひさぎさんがおっしゃって下さったので遠慮しながら書かせていただくッス、でござんす 。

  僕がサンバに初めてふれたのは、生のバツカーダだった。当時僕にとってのサンバはSバ・Sール《あの「リオのおじさん」高橋氏が設立したサンバ同好会。アレグリアの前身》で、それ以外の何物でもなく、そこが全世界だった。ハマッタのは87年のインペラトリスをSバ・Sールで演奏した時。短調で暗く切なく、しかし前に進もうとする曲調は、それまでバツカーダに合わせて歌う歌があるなんて思いもしなかった僕に衝撃を与えてくれた。短調のエンヘードは『昔(人によって想像する年代は違うと思うが)のヒーローものの主題歌』に似ていて、そこがハマッた理由ではないかと今では思っている。地球をまもる使命を持ちながら、孤独にさいなまれ、時には誤解され、自分が負ければ後がない、明日の太陽さえ見られないかもしれない。しかし、ここで立ち止まってはいられない。明日の希望を信じて生きていくのさ"的なところ が良かったんだろうなあ、きっと。だから最初は短調以外のエンヘードはいっさい聞かなかった。「うわっ短調のエンヘードなんか聞いてるの?おーいやだ。サイテー。と、Sバ・Sールのメンバーのある人に言われたのも、それに拍車をかけた(僕もしつこいなー。でも、それによってパゴーヂはいっさい聞かなくなった)。

  僕が大好きになった87年のインペラトリスの曲はダビングにつぐダビングで、昔のSP盤なんか目じゃない位にノイズが多くなっていた。ノイズの隙間からエンヘードが聞こえると言った感じで。そこで「87年のインペラトリスを絶対手に入れてやる」と心に誓い、東京は秋葉原へ。ここで揃わぬ物はないと友人から聞いたのだが、どこを探してもない。有為子さんに「新宿、渋谷、池袋だったらあるよ」と教えていただき、早速新宿丸井の"ヴァージンレコード"へ。あったあった!CARNAVALの写真がジャケットのCDが。そのまま一気に3枚も買った。それぞれ90、91、93と書いてあった。どれかひとつくらいバツカーダのCDがあると思っていたのだが、全部歌入りで、がっかりした記憶がある。そう、皆さんご存じの通り、それぞれの数字の年のエンヘード集だったのだ。今考えれば当たり前なのだけれど、3枚も買ったその中に、探していた曲がなかったのもショックだった。僕にとって87年のインペラトリス以外はまだどうでもイイ存在だったのだ。しかし、折角買ったのだから…と、その中でも短調の曲だけテープに集めて何気なく聞いていたら、1週間くらいしたある日、突然に良くなっちゃったのだ。例えて言えば、"疲労がたまって一気に吹き出して、入院して手術してもらって、看護婦さんと仲良くなっちゃった”って感じ........分かりにくい ?  ああ、もうスペースが.......その後の悲話を最後に皆さんとお別れしましょう。さよなら、さよなら、さよなら。その後、短調編集テープを聞きまくり、当然、必然、大自然、新しい短調のエンヘードが聞きたくなり、再び新宿へ。見つけた!!CARNAVALと書いてあるCDが。わくわくして帰り、ビニールを破き、トレイにのせてプレイボタンを押した。当時は何と呼んでいいか分からなかったが、聞こえて来たのは期待していたのとはあまりにも違うマルシャだった。あまりの衝撃に、1回取り出して、ケースに戻し、もう1回同じ動作を繰り返して再生したが、何曲飛ばしても音も曲も変わらなかった。しかし、気を取り直してもう1枚買ったCARNAVALの写真がジャケットの確実に期待に答えてくれるであろうCDを、わくわくしながらビニールを破き、トレイにのせてプレイボタンを押した。聞こえて来たのは期待していたのとはあまりに違う、すごいノイズのボサノバ調の曲だった。あまりの衝撃に、1回とりだして、ケースに戻し、もう1回同じ動作を繰り返して再生したが、何曲飛ばしても音も曲も変わらなかった。当時はなんて読んでいいか分からなかったが、ジャケットには○コ・ブア○キと書いてあった。電車賃かけて1日に使ったお金は一万数千円。........気絶。       
真夏の夜の事だった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

@インペラトリス=リオのカルナヴァルで一番上位のリーグ、グルポ・エスペシウのエスコーラのひとつ。@マルシャ=マーチ(もっと詳しく知りたい人は、ちゃんとした人に聞いてください)@○コ・ブア○キ=有名な詩人で作曲家で戯曲作家で小説家。ある人はシ○・○アルキを「しこぶ歩き」と勘違い。「どんな歩き方?」と聞いた。※なおちゃんではない。

★★間違ってたらごめんね★★コーナー!

そもそも。サンバのパレードって・・・何?という方もいますよね。

☆本来サンバのパレードは単なる賑やかしいお祭り行列ではなく、オペラのように登場人物やセットや衣装でひとつの物語りを表現するものなのです。エスコーラには専属の演出家=カルナヴァレスコがいて、(人気の演出家は争奪戦に)すべてのアーラ、アレゴリアのデザインをします。パシスタの衣装でさえ、演出家がNOと言えば着ることはできません。そうしてつくったパレードの完成度をコンテスト形式で競うのがカルナヴァルなわけですが、リオで頂点に君臨するリーグのグルポ・エスペシウともなると、参加人数は4,000人にもなります。(今年の最多参加人数はサルゲイロの5,800人!)かける金額だってハンパじゃありません。(グランヂ・ヒオはなんと1億2,000万円!もの大金をつぎ込み、でも6位でした。お金がすべてじゃないんですね、ちょっとホッとしますね。ちなみに私のヴィラドゥロが優勝した97年の少しパンクでクールな鳥肌ものの真っ黒なアレゴリアは、お金がなくて黒いゴミ袋をどうにか使えないかと考えたところから生まれたらしいです。)

☆リオのカルナヴァルのビデオを見た方にはおわかりでしょうが、リオでのパレードにはいくつものアーラとアレゴリアが出てきます。アーラがいくつか集まって物語の一つの章を表現し、アレゴリアがその章のクライマックスを表現しているのです。パレードの構成要素はカルナヴァルの審査項目と≒なのでそれを紹介します。(これはちょっと前のリオのものなので、変わっていたらごめんなさい)

◎エンヘード(テーマ)=ブラジルの歴史上・宗教上の人物や出来事、おとぎ話、社会的な出来事、有名な作曲家を讚える、などさまざま。そしてそれがカルナヴァルでのすべての基となります!
◎サンバ・ヂ・エンヘード(テーマ曲)=エンヘードを表現する、カルナヴァルのための曲です。ところで。今年のリベヂのエンヘードは覚えましたか?歌いながら演奏するのが難しい楽器以外の人はパレードしながら歌いましょうね!その方が絶対に楽しいから!!これだけは断言しちゃうもんね。
◎バテリア(演奏力)=200人以上と決まっていますがリオのエスペシウではだいたい400人くらいです。テストを受けて合格すると正式なバテリアとして参加出来ます。カルナヴァルの前には週に2〜3回練習しています。羨ましいですね。パレードで管楽器は禁止されているので(CD録音には入っていますが)打楽器・弦楽器・歌手という構成になります(打楽器の種類については"リベルダーヂの基礎知識"を参照してください)。バテリアのリーダーは、10年以上の経験者を「メストレ・バテリア」、その助手で10年未満の人を「ヂレトール・ダ・バテリア」といいます。
◎アレゴリアとその装飾=アレゴリアは8台以上12台未満と数が決まっています。各エスコーラが一番力を入れるのがコミサンのすぐ後に出てくる一番豪華なアレゴリアで、これだけに2,000万円くらいかけるそうです。
◎ファンタジア(衣装)=これもエンヘードを表現するための手段です。アーラはだいたい各エスコーラとも30種類位あります。練習なしでOKのアーラと、練習に参加する回数が決められているアーラとがあります。練習なしのアーラはコンテストの採点対象にはなりません。観光客であってもパレードに参加することが出来ます。参加したい人はエスコーラの受付に申し込み、気に入った衣装を買います。値段は1万円くらいから。それぞれの値段やデザインはエスコーラのホームページで見ることが出来ますので、興味があったら是非。リベヂのホームページのリンク集から行けますよ。
◎コミサン・ヂ・フレンチ(先頭委員会)=文字通りパレードの先頭にいます。露払い役であり、観客にテーマを伝えるポジションであり、品位が要求されます(ふふふ。だから私は今年コミサンなのだ)。パレード全体をひとつの物語と考えた場合、コミサンは表紙や目次にあたります。衣装・動き・演技などによって、これから続くパレードの素晴らしさを印象つける役割を担っているのです。リオでは人数が8人以上15人以内と決められています。
◎メストレ・サラ&ポルタ・バンデイラ=エスコーラの象徴である"旗"を持つ、大変に名誉ある重要なポジションです。2人で1組で、ポルタが女性、メストレが男性。宮廷風の豪華な衣装を着ています(女性の衣装は10kgを軽く超えることも)。カップルの息の合ったコンビネーションによる踊りはもちろんですが、品性・優雅さ・演技力など、すべてに高度なものが求められます。
◎エヴォルサォン(進行)=パレード全体の進行・盛り上がり。アーラやアレゴリアがスムーズに進んで行くことが要求されます。(これは浅草でも同じですね)
◎アルモニーア(ハーモニー)=曲・バテリアの演奏・プシャドール(エスコーラのメイン歌手)の歌を総合した音楽性が評価されます。参加者がちゃんと歌いながらパレードしているかどうかも採点対象になるんです。
◎コンジュント(全体)=音楽性・ドラマ性・ヴィジュアル性などの総合評価。

☆これら10項目が10点満点で評価されます。その他にもサンバのパレードにはいくつかのお約束事がありますが、それは次回に。

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