1999/6月  第3回   

投稿:タリルッパK「エンヘード=キムチ説」
キソチシキ★「エンヘードとは?エスコーラとは?」

投稿コーナーは今月も引き続き、当たり年と名高い『95 SAMBAS DE ENREDO GRUPO ESPECIAL』についてです。 前回「95年のことなら言わせろ!」という方を募集しました。そしたらリベヂニュース発行当日、「95年のことなら何故私に書かせない?!」と金沢さんが言ってくださったのです!ありがたいことです!

『サンバジエンヘードは、キムチに似ている!               タリルッパ金沢』

 話題の95年に初めてブラジルに行きました。いくつものエンサイオに出かけたりなどで、エンヘード観がずいぶんと変わりました。サンバを聴きはじめたころは、あまりエンヘードには興味がありませんでした。初めて買った88年のリオエスペシアウのエンヘード集は、どの曲もなんとなく似て聞こえ、続けて聞いていると前の曲がどんなのだったか忘れてしまうような感じでした。印象に残ったのは、ヴィライザベウの「キゾンバ、フェスタ・ダ・ハッサ」だけだったかな?その後、エンヘードバンドをやる機会もあったので積極的に聞きましたが、毎年発売されるエスペシアウのエンヘード集では、お気 に入りになる曲に巡り合う確率は低かったように思います。その理由のひとつは、エンヘードの詞・曲が長くて覚えづらいことです。もちろん過去のエンヘード名曲集では、それでもお気に入りの曲はたくさんありましたので、これだけが原因ではないのですが。95年のカーニバルの時期にブラジルに行くことになって、この年のCDもあらかじめ聞いたのですが、例年より確かにいいとは思ったものの、巷での評判ほどはよいとは思いませんでした。ところが、エスコーラのエンサイオに行くと、自分達のエンヘードを誇りと喜びに満ちた表情で延々と(終わりのない、永遠に続く音楽のように)演奏している。見ているうちについつい引き込まれ、最初はそれほどではなかった曲も、気持ちよく感じてきたのです。パレード本番は、セトール0という地元の人(しかもエスコーラ関係者が多いといわれている)がほとんどの、スタートゲート前の場所で見る機会があったのですが、観衆との一体感には鳥肌が立ちました。こうしたプロセスを経て95年のエスペシアウのエンヘードは、私にとっては他のどの年よりも名曲ぞろいとなってしまいました。優勝曲となったインペラトリスなどは、高貴な響きさえ感じてしまいます。日本でCDを聞いた時には、それほどいい曲ばかりとは思わなかったのに、なぜだ?この時私は、エンヘードは、キムチに似ているのではないかと思いました。(かつて私がビビンバにたとえたのは、バテリアの音の構成とその魅力であり、これとは異なります。)出来たてや聞きはじめは、漬け始めのキムチのようにそれほど美味しくないものであっても、バテリアの打楽器のパターンが決まり、プシャドールが叫び、そしてエスコーラに所属する全員が歌いながら、パレードの音楽として仕上げていく。このように熟成されていった後、パレードのスタート時に最高の味となって、一番の食べ頃を迎えるのです。曲ができた時はまだ”浅漬り状態”であって、パレードスタートの時に最高に美味しくなるように計算されているんではないか、ということです。そして熟成を支えているのは、エスコーラのメンバー全員がパレードを素晴らしいものにしようとする、ひたむきなキムチじゃなくて気持ちと、自分達のエンヘードが一番いい曲であると信じ、誇りを持つことではないでしょうか。「自分とこが一番さ」というのを表わすのに、「手前味噌」なる言葉がありますが、各家庭でキムチを漬け込むお隣り韓国では、「手前キムチ」といいます(ナンチャッテ)。手前キムチの精神と、みんなで作り上げていくんだというキムチが、「手前エンヘード」を真の「名エンヘード」にしていくんだと思います。

@エンサイオ(ensaio)=「練習」「リハーサル」@エスポシウ=リオのカルナヴァルで一番上位のリーグ、詳しくは後述。@ヴィライザベウ、インペラトリス=エウペシウのエスコーラのひとつ。@プシャドール=エスコーラのメイン歌手。 

『エンヘードの魅力の根幹(あくまで僕の考えですよ!)        ジョバンニ』

・サンバであること(ここでは詳細は避けておきます)
・お祭り(パレード)の曲であること!(これは切り離してはならないエンヘードの最重要要素の一つです!!)
・つきぬけて明るかったり、暗かったり、大袈裟に?感情表現されている所(自分の感情をむき出しにすることも人間にとっては快感なのだと思います。)
・エンヘードには基本的に暗さがあっても最終的に明るいポジティヴに展開する。だから元気になれるのだ!(聴きなれちゃって普通の事になってるかもしれないけど、特に95のTIJUCAなんか犯罪的?だー!)
・めちゃくちゃ健康的に元気で痛快なところ。
・理屈抜きで「楽しい」ところ。
・行進曲性?(前進する大きな力。大袈裟に表現すると、生命の力強さを感じませんか?!生きている事に感動!!)「僕らはみんな生きている」をエンヘード化しましょう!
・みんなで歌う曲であること。一体感!!(みんなで表現するパレードの一要素。)みなさん、歌ってますか?私たちのパレードで、人の鳥肌をたてましょう !!!Vamos maravilhar!!
・ただ楽しい、騒ぐだけではない事。そのスタンスがあるからこそ、しっかりとした構成と多彩な表現力があると思います。(人間臭さ万歳!!) (パレードはみんなで作り上げるものですよね!みんながエンターティナーですよ!!)

@TIJUCA(チジュッカ)=エウペシウのエスコーラのひとつ。

☆★Q&インチキA★☆コーナー@これっきりかもっ!
前回おすすめしたサプカイ(リオのカーニバルメイン会場)ライブ録音のCDを聴いて、質問をくれた方がいました!なんていい人だっ。
☆Q:素朴な疑問ですが、エンヘードって毎年新曲なのですよね?何故、掛け合いでお客さんも歌っている(知っている)のでしょう?(まさか、あの度迫力のレスポンスは、バテリア、ダンサーだけ?)
★インチキA:そうです。エンヘードは各エスコーラ(サンバチーム)とも毎年、その年のテーマに合わせて作曲します。あのレスポンスがメンバーだけか?!まさか!大観衆を巻き込んでの、大合唱大会です!!先程金沢さんが書いておられた通りです。観客との一体感です!なぜ観客が曲を知っているかというとですね、私たちが持っている毎年のENREDO集は 日本では12月頃に発売されるのですが、ブラジルではその少し前に発売になります。つまり2or3月に開催されるカルナヴァルの数ケ月前です。エスコーラに所属していない一般の市民もそれを購入し、ご贔屓のエスコーラの曲を、あるいは今年のお気に入りの曲をみつけて、覚えるのです。カルナヴァルのために!人気の高い曲はラジオや町中でもガンガンかかるし、カルナヴァル当日も当然「待ってました!」の大合唱となります。それが人気のバロメーターともなり、コンテストの審査にも影響するそうです。日本では観客の熱い熱い怒涛のような応援は望めませんから、せめてチーム内部だけでも、歌って、掛け声に応えて、一体感を味わいましょうよ。

*********************** 観客の応援といえば。こゆみこさんからナイスな提案がありましたー。ゴール付近にサクラを、まんべんなく埋め込むように配備しておくのです。そしてLiberdadeが近付いてきたら声を揃えて「ここが優勝だー!」と(ポルトガル語で)叫んでもらう。ジョバンニがそれに応える!バテリアが、ダンサーが、一体となって声を掛け合う!そこらへんの観客も巻き込んでの大合唱!浅草がサプカイになる瞬間だーっ、どーだ!!! 名付けて"地雷作戦"(強制撤去されたりして) **********************

☆★間違ってたらごめんね★☆コーナー!
そもそも。エンヘードってエスコーラって・・・何?という方もいますよね
◎ エンヘード=SAMBAS DE ENREDOというのはカルナヴァルの時の、カルナヴァルのための、サンバです。日常生活の中にあるサンバ=パゴーヂとは対称的に。一般にサンバというと「うるさい音楽」「騒がしい」と思われているのは、カルナヴァルの印象が強いからでしょうね。でもサンバには、静かに涙しちゃうような曲だってあるし、小人数編成だからこそ美しい曲だって、演奏だって、たくさんありますよねぇ。エンヘードにはいろいろと特有な特徴があります。当然、音楽的な特徴(カバキーニョの弾き方とか?)もいくつかありますが、これは今度誰かちゃんとした人に書いてもらいましょう。でも普通に聴いて最初に気づくのはおそらく「誰か叫んでるみたい」でしょう。Liberdadeでは、ジョバンニがそれをやっています。" GRITO DE GERRA"(直訳すると戦いの雄叫び?だったかな)というポジションです。皆の士気を鼓舞する役割で、エンヘードに特有のポジションだと思います。いないとほんとに物足りない感じになるのです。
◎エスコーラ=ESCOLAとは、サンバチームのことです。(直訳するとサンバ学校 。)Liberdadeも正式名称は ESCOLA DE SAMBA LIBERDADEといいます。リオには 大小60以上のエスコーラがありますが、そのすべてがサプカイ(メインの大会場)でディスフーレ(パレードのこと)出来るわけではありません。あのパレードはコンテスト形式で、これまでの成績でクラス分けがされています。頂点に立つのがGRUPO ESPECIAL。(グルポ・エスペシウ)その下がGRUPO A→GRUPO Bと 続きます。(グルポ・アー→ベー)普通に会話に出てくるのは、ほとんどエスペシアルに君臨する(またはしていた)エスコーラです。しかしグルポ・エスペシウといえども地位が安泰なわけではなく、コンテストで 最下位から2つのチームは、いかに伝統あるエスコーラであろうとも容赦なくその下のクラスに落とされます。同じく、下のクラスで上位2チームは上のクラスに上がります。ですから皆、エスコーラの名誉をかけて真剣勝負そのものなのです。リオのエスコーラは地元毎に在るので地元の人にとっては"おらがチーム"。エスコーラに入っている人もいない人も、本当に誇りをもっていますし、愛しています。

祖国を離れて地球の裏側である日本まで来ているブラジル人と、こんな会話をしたことがありました。「どこから来たの」「リオ」「リオのどこ」「(変な日本人だな)パドリ・ミゲルだ」「じゃあ、あなたはモシダーヂだねっ」そしたら彼はどうしたか?目をうるうるさせて胸に手を当て天を仰ぎ「ああ、MOCIDADE!!!」。そしてエンヘードを歌い出しました。私も(歌詞はインチキながら)一緒に歌いました。その日から仲良しさんです。 〜〜〜〜 (モシダーヂMOCIDADE=グルポ・エスペシウのエスコーラのひとつ。今年のカルナヴァルでは、観客の人気がダントツだったのに異常に低い点数をつけた審査員が一人いて、結果は4位。陰謀説まで流れたらしい)

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