2000年3月号

おーゆみこの サンバ化日記    2000年3月号     おーゆみこ自画像
〜サンバ化モーレツサラリーマン〜



●情報提供や取材を求める電話やメールが「リベルダージ・インフォメーションセンター」である私のところにはたくさんやってくる。まあ、ひじょ〜に「いつものこと」なのであり、以前にもこのコーナーで書いたのだが、テレビの取材というのは、どうにも相手にまずある種の「思い込み」があり、それにしたがってすでに考えられている構成に適当にあてはまる図を探すというパターンが多い。その思い込みがえてして「しょーもないもの」なのでこちらとしても苦笑せざるを得ない。

●先日は、ブラジルに拠点をおいているアメリカ人のプロダクションが「ウニドス・ド・ムンド」(先日ぽしゃったウニドス・ド・ジャポンではない。同様な企画ではあるのだが、アメリカ人やヨーロッパ人が中心になったものである)に出る日本人を取材したいと言ってきた。間に立ってコーディネートに尽力してくださった女性はとてもとてもいい人だったのだが、その彼女が間に立って困ってしまうほど、相手の要求は無理難題なのである。そもそも、その時点ではウニドス・ド・ムンドに出る日本人はいなかった・・・(正確に言えば我らがよねちゃんとゆかりちゃんがエントリーしてはいたのだが)しかし彼らのもくろみは、日本でばりばり働くモーレツサラリーマン(古いね)が、リオで一変して踊り狂うという図柄だった。会社まで押しかけて仕事ぶりを取材し、そして一緒にリオ入りして、日ごろの憂さを晴らし「踊り狂う」様を密着取材したい、と。もちろん彼らが日本にやってきて滞在できる期間は限られているし(1週間弱)、その上そのスケジュールを日本側に知らせてリサーチを頼んだのは彼らが来日する直前だった。まずもって、ウニドス・ド・ムンド側に問い合わせて、日本人参加予定者は2人しかいないことぐらいは確かめてから企画を立てたらどうなのか。そうすればその2人とも彼らの思惑にはぴったりこないことぐらいあらかじめ調べられそうなものである。(ゆかりちゃんはかろうじて「サラリーマンでかつダンサー」という条件にはあてはまるものの、その時点では参加をキャンセルする可能性が強かった。結局参加したんだけど–それについては報告が楽しみですね)。

イラスト「花見シーズンなどに、サンバスポットによくいるやつ」の図●そもそもの発想がどうにも苦笑ものである。彼らが求めている姿の「サラリーマン」はしばしばブラジルレストランなどでネクタイを取ってハチマキにしながら「踊り狂って」いるが、その「行き着いてしまった果て」の姿を求めていたとしたら(我々がそうではない、とは言い切れないが・・)ちょっとカナしい。

●結局彼らは、彼らが勝手に決めた日程で来日したときに日本でモーレツに仕事をしている姿を取材でき、なおかつ彼らが勝手に決めた日程でリオにウキウキと乗り込んでくれる「ヘンな日本人」を、来日前のドロナワの(しかも遠隔操作の)取材であたりまえながら見付けられもせず(それでも前述したように、ゆかりちゃんがドタンバで理解ある上司の許可をもらえて行くことになり、かなり「彼らの思惑」に近い線にはなったのだが、もともと彼女はフツーの日本人じゃないしぃ・・・)、そして急きょ、取材候補となったのが、我らが新郎新婦おかべっちとまりこさんであった。「日本的」な情景を取りたいというのが彼らのもともとの意向であるから、日本式の結婚式と披露宴はまさにもってこいである。こうして「平成のロミオとジュリエット??」おかべっちの結婚式は、有名人のそれのように取材陣が殺到・・いや、一組だけだが・・することとなった。


●そして彼らの結婚式の二次会である。打ってかわってカジュアルな雰囲気の中、披露宴からの流れで礼服を着たままの人間も混じるバテリアのバツカーダで登場する新郎新婦、そしてダンスを披露。パーティが進むに連れ、人々の「踊り狂い」度はますます高まる。そして混成バンドのライブとなると興奮も最高潮!ウアマニャやカシキアンドでは大合唱も。

●へへん、どんなもんだい。と、私は内心ほくそえんでいたのである。もちろん上記の2次会も取材され、はからずも「日本的な光景」が「ブラジル的光景」に急転直下!?する図式は成り立ったのである。図式としては似ていても、しかしそれは彼らがもともと抱いていたイメージとはだいぶ違ったのではないか?しかしいささか残念なのは、取材に来た連中は決して「ブラジル人、またはサンバを良く知っていて好きな人」だったわけではないらしい、ということだ。ステロタイプな日本人像と、これまたステロタイプなサンバのイメージの落差を勝手に妄想していたアメリカ人なんである。取材にきたのがブラジル人だったら・・・リオのカーニバルで浮かれ踊るモーレツサラリーマン、よりも、結婚式でカシキアンドの大合唱、のほうを面白がってくれただろうにな、などと思う。さて番組はどんなふうに仕上がったものやら。
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